人間同士の対話だから、「何を聞くか」以前に「どう聞くか」

こんにちは!そろそろクリスマスですね。 この投稿はResearch Advent Calendar 2025 の 22 日目の記事です。

adventar.org

今日のテーマは、 ユーザーインタビューから学んだ「聞き方」 です。

(ここで少々自己紹介)

米山(id:yone-yama, X: @yone_yama0312)です。株式会社はてなで働いています。

キャリアのはじめは営業職で、7年ほどお客様たちと喋り倒すことを生業としていました。 プロダクトマネージャーに転じてからはユーザーインタビューという仕事に魅せられ、後に新規事業を立ち上げる際にはメンバーをけしかけて全員で毎日ユーザーインタビュー"だけ"やるという(まるでリサーチャーが見る夢のような...)日々を過ごしました。

その帰結として現在はtoittaというユーザーインタビューを分析するプロダクトの責任者をしています。我ながら好きが高じて仕事になったわかりやすい例ですね。

ja.toitta.com

そんな私が、これまでユーザーインタビューの実践を通じて学んだことであり、インタビューという場であるかにかかわらず広く対話の機会において特に大事にしているのが「聞き方」です。

聞き方 = ボールの投げ方

ユーザーインタビューは、キャッチボールに喩えるならば「投げるボールが何であるか(何を聞くか)」と同じかそれ以上に 「そのボールをどこに、どのくらいの速さで投げるか(どのように聞くか)」 が重要だと感じます。 なぜなら、投げることではなく受け取って返してもらうことが目的だから。言いたいことを伝えてわかってもらうことではなく、お相手のことを知ることが第一義だからです。

私自身はこれまで、業務としてインタビューを行うこともあれば、業務外のごく個人的な趣味としてユーザーインタビューを受ける側に立つ機会も相当数持ってきました。 年末らしく本日はこうした過去の経験を振り返りつつ、自分なりの「良い聞き方」というのを言語化してみます。

というわけでここから本題。

聞き方 = 投げ方のプラクティス4選

先のキャッチボールの例がわかりやすい(?)のでそのまま使うと、良い投げ方(聞き方)というのはつまり 受けやすく返しやすい(お相手が内容をきちんと咀嚼でき、ご自身の体験や考えを気兼ねなく述べやすい) 投げ方だといえます。そのために自分が特に気をつけていることを、以下の4つにまとめて紹介してみたいと思います。

  • 1. 球速に配慮する
  • 2. 角度をつける
  • 3. 球種を宣言する
  • 4. ボールを受ける

1.球速に配慮する

どれほど良いボールであろうとも、剛速球でお相手が取れなければ意味を成しません。受け取り、返しやすい球速を追求しましょう。 これは早口をやめましょうという意味ではなく、「質問するときにお相手が受ける印象をなるべく柔らかくしましょう」ということです。

💡例 : 朝起きてすぐに白湯を飲んでいる理由を聞きたいとき

剛速球なパターン

「なぜ白湯を飲むのですか?」

適度な球速のパターン

「白湯を飲まれてるんですね!なにか理由があってのことなのでしょうか?」

「白湯を飲まれている理由」を聞きたいのは同じですが、受け取る印象が大きく違うように見えます。

答える側に立つと、前者は自分が明確な理由を持ってそうしていることを前提としていて、理由をしっかり話さないと分かってもらえないような気がしてしまいます。 一方後者はトーンが柔らかく、何を答えても大丈夫だと思えそうです。なんならさしたる理由がなくても受け入れてもらえそうで安心感があります。(当然、そのような「さしたる理由がない」こともリサーチにおいては非常に重要なヒントになりえます)

インタビューで聞くことの多い「理由」「根拠」というものは、言い方を間違えるとあたかも問い詰められているかのように聞こえてしまうことがあります。 キツい質問は詰問(きつもん)になりえる と心得ておくとよいでしょう。(若干のダジャレです)

似た例として以下のようなパターンも考えられます。

💡例 : TwitterがXという名前に変わったことへの印象を聞きたいとき

剛速球なパターン

TwitterがXという名前に変わりましたが、これについてどう考えていますか?」

適度な球速のパターン

TwitterがXという名前に変わりましたが、この出来事についてお考えがあれば聞いてみてもいいでしょうか?」

これも「とある事象についてどう考えているか」と聞きたいのは同じです。「もし何らかのお考えがあれば」+「聞いてみてもいいか?」と枕詞と言葉尻を足すだけで、受け取りやすさは段違いです。

例外

このことを球速と表現したのは、「お相手が受け取って返せるならば、ある程度速い球でもよい」という例外があるからです。

お相手がお考えをつまびらかに話してくださる用意があるときに「もしxxがありましたら...お伺いしてみても...?」と毎度やってしまっては水を差してしまいます。 うまく会話がテンポアップている中では、あえて「それは何でなんですか?」「どう思います?」といった、少し球速が速めのボールも成立します。

一定の正解があるというより、今この対話の中で交わされるボールがどのくらいの球速であるのか、と意識することが有効なように思います。


2.角度をつける

それでも一定の球速を出さざるを得ない質問があります。「なぜAではなくBなのか」もしくは「なぜXという手段を取らなかったのか」など、別の選択肢を示した上でWhy Notを問う場面です。

過去取った行動や考えたことが常にお相手自身にとって合理的とは限りませんから、この質問は(実際にそうかは別として)非合理な自身を開示することを求められているように受け取られる可能性があります。知らない人から「なぜあなたはそうしなかったのか」などと聞かれたらウッとなってしまいませんか。

こうした場合には、質問というボールを相手とは別の角度に投げ、バウンドさせてから受け取ってもらう ようなアプローチを取ってみます。

💡例: 「ダイエットしたいが間食は多い」というお相手に心理を聞きたいとき

ノーバウンドの例

「ダイエットしたいとおっしゃってるのに間食してしまうのはなぜですか?」

ワンバウンドの例

「ダイエット中に間食してしまうの、結構あるあるですよね...。これって一体何でなんでしょうね?」

ノーバウンド・ワンバウンドという表現をしてみました。

前者のノーバウンド例では、「あなたが 」間食をしてしまうのが何故なのか、を問う構造です。自分が聞かれたらかなり答えづらい。

一方で後者は、お相手の行動を一般的な事象("あるあるだと思う")と認める = ワンバウンドさせた上で、「 そのパターンが起きるのは 」何故なのかについての考えを問うトーンです。

「なぜ自分はあまり合理的でない行動を取ったのだろう...」というストレスフルな自問よりも、「(よくある話だという前提のもと、自分の場合は)こういう理由かもしれないな」と考えを巡らせることができるのではないでしょうか。


3. 球種を宣言する

ピッチャーなら、今から投げようとしている球種(ストレート、カーブ、シンカー、チェンジアップetc.)をキャッチャーに知らせず投げることはまずありません。受け取ってもらうために、サインなりであらかじめ宣言するものです。

これと同様、投げるボールの球種を宣言することはインタビューでも同様に有効です。どんなテーマ・意図のもと、どんな粒度の回答を期待して行う質問なのかを宣言する枕詞を可能な範囲でつけるとよいでしょう。

話題から話題のトランジションを宣言する

インタビューにおいて話題が転換する際には、何から何に転換するかを明確に宣言すると分かりやすいです。

時系列、主語となる人物、対象物の転換があれば、話題と話題の間に以下のようなトランジションを設けることを意識します。

💡例: 時系列(過去から未来) が転換するとき

「まずはここまでで製品を知ったきっかけについてお聞きしました。次に舞台を過去から現在に移して、今現在どのようにご利用いただいているかを伺いたいと思います」

💡例:対象者(ご本人からそのご家族)が転換するとき

「ここまででAさんご自身のことは沢山お伺いできたので、次はよろしければご家族についてもお聞きできればと思います」

💡例:対象物(自社製品から他社製品へ)が転換するとき

「当社製品についてのご意見、本当にありがとうございます!ではここで、当社以外の製品についても差し支えなければぜひお教えください」

言わでもわかると思われるかもしれませんが、会話が混み入ってくると見失うこともそれなりにあるので、ガイドを示すことはお相手の負荷軽減に有効です。

期待する回答の粒度を宣言する

例1が質問の宣言なら、こちらは回答の宣言です。「何を、どのくらい、どういう条件で」回答してほしいかを宣言します。

💡例:「楽しかった思い出」 のような広いテーマで質問したいとき

「ご自身が体験したXにまつわる出来事のうち、特に楽しかったなあと今すぐ思いつくものを3つほど挙げていただけますか?」

「楽しかった思い出はありますか」だと広すぎます。「特に」「いますぐ思いつく」「3つ」などの制約をあえて定めると、かえって考えやすくなります。

また、質問に答えていただくことの負荷が高いことが予期される場合は、可能な限り事前にフォローを入れます。 特に、どうしてもセンシティブな内容を伺わねばならない場合は強く意識します。お相手への配慮はどれほど言葉を重ねても足りないものです。

💡例:質問が大量にあるとき

◯◯についてご意見を伺いたいのですが、対象が沢山あるのですべてお答えいただかなくて結構です。ご自身が特に思い入れのあるもののみ、一言だけ印象をいただきたく」

💡例:話題がセンシティブであるとき

「これはあくまでお答えいただけるようでしたら、で結構なのですが、XXXをご経験なさったことはあるでしょうか?繰り返しますが、ご無理のない範囲で結構です」

事前に台本を準備して臨むあなたと違って、お相手はどんな質問がやってくるか知らない状態でこの場に臨んでいます。 「インタビューに正解はありませんのでご自由にお答えください」などと言っても、質問の意図がわからないなら「自由」もなにもないわけですから、 なるべくお相手に負荷なく、迷わず、思うままにお話いただける場づくりを意識していきたいところです。


4.(最重要)ボールをきちんと受ける

最後です。インタビューで質問を繰り出すことに集中してしまうと意外とできないのが 「お相手から投げていただいたボールを受ける」 こと。

よい回答が得られたか、どのくらい掘り下げるか、次の質問をどう聞くか、時間は足りているか...。インタビューする側の頭の中はけっこう忙しいものですが、 そんな忙しさにあってもなお、お相手の回答へのリアクションがきちんとできているかは最優先で意識すべきことです。

慣れないうちは特に、回答いただいた内容をぶった切って「はい、ありがとうございます。では次に...」などと言ってしまうこともありますが、 これを意識的に避けないことには、お相手も次の質問に前向きに取り組みづらくなりますし、自分たちも深い話をうかがえる機会を逸します。

残念ながら正解はない

かといって、ボールの受け方(リアクション)に正解はありません。お話をしっかり聞き、思ったことを真心こめてしっかり伝える以上のことはありません。 なのでインタビューのたびに反省することが最も多いのはリアクションです。お相手に失礼ではなかったか、「この人に話してよかった」と安心してもらえたか、と終わったあとに悩みます。

ツーショットトークバラエティから学ぶ

悩む中で見つけたひとつのアプローチとして、「トークバラエティから学ぶ」というのが個人的に手応えありでした。 言ってしまえば話芸なので、その道のプロことお笑い芸人諸氏から学べるものは多いわけです。

これだけ見ると月並みかもしれないんですが、重要なポイントがあります。 「ゲスト・ホストがツーショットで話すトークバラエティ」 を選ぶことです。

まず、大人数が出演する番組は避けます。例えばアメトーークのようなゲスト・ホストが大人数で入り乱れる番組は(個人的には好きですが)不向きです。

また出演が少人数であっても、対話形式でない番組は避けます。例えば酒のツマミになる話は1人ずつ会話の主導権を握るため不向きです(個人的な好みは同上)。

かつ関係値の出来上がったコンビ同士のトークバラエティでもないものを選びます。さまぁ~ず x さまぁ~ずはツーショットトークですが、両氏の培った関係値あってこそ成立する会話なので不向き(同上)。

その極致こと「あちこちオードリー」の若林氏

最も参考になったのは「あちこちオードリー」。毎回異なるゲストを相手取ってオードリー若林氏がエピソードトークを引き出すさまが見られます。大御所・若手問わず、先輩後輩・事務所違いの微妙な関係すら何のその、どんな人からも他の番組で聞けないような深い話を聞き出すMC若林氏の手腕には凄まじいものがあります。

相槌も問いかけの言い回しも無尽蔵でバリエーションが豊か。話を受けてのまとめ・抽象化・スムーズな話題転換は芸術の域です。

何よりも本当にゲストの話をおもしろく聞いていて、ゲストが嬉々として自身の深い考えを述べているように見えるのがよい。もちろんゲストもホストも話すのが仕事で、一定の台本はきっとあるものでしょうが、それにしても人同士の対話というフォーマットのひとつの理想形ではないかと思います。

なおほぼ同様の理由から、若林氏と南海キャンディーズ山里氏の2人による「たりないふたり」シリーズも非常に学ぶものの多い作品です。 (※山里・若林両氏にさまぁ〜ずのような関係値がないかというとそうではないんですが、かなり趣旨と外れるので今回は割愛)


最後に

ここまでつらつらとプラクティスらしきことを書いてきましたが、結局のところすべては対話するお相手を尊重することに尽きるな、と思いました。 自分たちのために貴重な時間を割いてくれ、時間だけでなく自身の気持ちや考えや出来事も詳らかにしてくださろうとしているお相手ですから、その真心に少しでも報いる場でありたいものです。

これまで私のインタビューをお受けくださったみなさまにあらためて感謝申し上げつつ、締めの言葉にかえさせていただきます。最後までお読みいただきありがとうございました!

明日23日目は Yuki Yoshinaga / UXマン さんより「toitta askがとっても便利!」が公開される予定のようです。ぜひお楽しみに! (自分のプロダクトを褒めてくださるブログが出るなんて感無量です!!ask toitta↓の今後にもご期待ください)

ja.toitta.com